雲が運ぶ季節
『雲が運ぶ季節』は、夜光貝を螺鈿(らでん)技法で虹色に輝き漂う雲を表現しています。
見る角度によって光り方や色目が変わる夜光貝は、時折の人生とも似います。
螺鈿(らでん)とは、漆工芸品の加飾法の一つで、貝殻の内側の虹色光沢を持った真珠層部分を切り出し、漆地や木地の彫刻された表面にはめ込む手法を指します。
螺は「貝」、鈿は「ちりばめること」を意味しています。
日本には、奈良時代に唐の技法が伝えられ、楽器などの装飾に使用されていました。
古い遺品としては正倉院宝物として伝来する螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんごげんびわ)、螺鈿紫檀阮咸(らでんしたんげんかん)などがあります。
ボディの白漆の配合からこだわり、サイドの2本柱には砂に合わせた、青系で螺鈿をほどこしています。
優しい色目の水色と白の2色計が、穏やかに流れる人生の流れにも例えられます。
内側は金梨地(きんなしじ)仕様、桜の花びらと夜光貝のもみじが華やかに施されています。
梨地(なしじ)とは、器物の表面に漆を塗り、金・銀・錫などの梨地粉を蒔き、その上に透明漆を塗って粉をおおったあと、粉が露出しない程度にとぐ技法を指します。
梨の肌に似ているところからこの名があります。