1.「輪島塗」とは
「輪島塗」とは、石川県輪島市で取れる土(輪島地の粉)を使って、輪島の職人の手によって生産される漆器です。
漆器の最高峰といわれ、実物を見たことが無くても、「輪島塗」という名前を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
残念ながら、その名前を聞いただけで「高級品で値段が高い」という認識の人が多いのですが、実は輪島塗を完成させるためには、全部で100以上の手作業での工程があり、多くの職人の手間がかかっているのです。
ここでは、そんな「輪島塗」の歴史と特徴について解説していきたいと思います。
輪島塗に少しでもご興味を持っていただけると幸いです。
2.「輪島塗」の歴史
輪島塗の起源は、今から約600年前(1394~1428年の応永年間)に、現在の和歌山県北部にある根来寺(ねごろじ)の僧が伝授したと言われています。
そして、江戸時代中期以降に発達し、現在の技法が確立されました。
輪島塗は、昭和50年には伝統工芸品に、昭和52には重要文化財に、昭和57年には輪島塗の制作用具など3,000点以上が重要文化財に指定されました。
そして、美術工芸品として日本一の漆器と称されるようになりました。
重要文化財は、日本に所在する建造物、美術工芸品、考古資料、歴史資料等の有形文化財のうち、歴史上・芸術上の価値の高いもの、または学術的に価値の高いものとして文化財保護法に基づき日本国政府が指定した文化財を指す。
(引用元:重要文化財 – Wikipedia)
3.「輪島塗」の特徴
輪島塗は、下記のような特徴から、「堅牢優美な輪島塗」と称されています。
- 原材料となる木や漆すべてが自然素材
- 輪島特産の「輪島地の粉」を使った堅牢な下地
- 「布着せ」による強度の保持
- 漆を塗り重ねる本堅地作業での堅牢性の重視
- 100以上に及ぶ丁寧な手作業による工程と、いくつものスペシャリストによる伝統の技
- 「蒔絵」「変わり塗」などの巧みな加飾の技
- 優美で滑らかな独特の質感
- 布着せ本堅地下地仕上げのため修理が可能
- 大腸菌などの、抗菌作用を保持
輪島塗で使われる「漆」とは、天然素材からなるため、地球環境にやさしい無公害の塗料です。
そして原材料となる木も、もちろん天然素材のため、自然の恵みと職人の技が生んだ傑作というわけです。
そんな輪島塗を作るための総工程は、下地作業から始まり、全部で100以上あります。
基本的な作業を大きくわけると、「手塗り」「手彫り」「手描き」の3つからなり、塗りだけでも36工程あるのです。
まずは「手塗り」である「下地作業」について解説します。
輪島塗は、木地に下地を厚く施すことにより、丈夫さと美しさを両立させています。
まず、微生物の化石からなる珪藻土(けいそうど)を水で練って素焼きし、細かく砕いたもの(=輪島地の粉)を漆に混ぜて塗ります。
そして、木地に布を貼る「布着せ」と呼ばれる作業を行うことで、椀の縁や高台、箱ものの角など傷つきやすい所を補強します。
これらの作業を約3~4カ月かけて行っています。
この独特の下地こそが輪島塗の最大の特徴と言われています。